頭部外傷
頭部外傷
頭部外傷とは頭をぶつけてできる怪我の総称です。
脳は頭蓋骨という硬くて分厚い骨や脳脊髄液を含む髄膜などで守られています。
歩行時の転倒や交通事故、スポーツ時の転倒・衝突など、外部から強い衝撃を受けると、皮膚の切り傷や皮下血腫(いわゆるタンコブ)、頭蓋骨の骨折、脳の怪我(脳震盪や脳挫傷、外傷性くも膜下出血、急性硬膜下血腫など)が生じる場合があります。
ぶつけた直後には自覚症状がなくても、時間経過で血腫などが拡大し、症状が出現し、ときには意識を失うこともあります。
特にご高齢の方で血液をサラサラにする薬を飲まれている方などは注意が必要です。
何らかの原因で頭部をぶつけた時には、できるだけお早めに受診していただくことを推奨しております。
脳震盪とは軽度頭部外傷により受傷直後、一過性の意識消失や記憶障害を起こすことです。
多くは意識消失や記憶障害などの症状は短時間で消え、元の状態に戻ります。
しかし、スポーツ時の転倒・衝突などで脳震盪になった後、数日から数週間後に再び頭部外傷を負うことで脳に深刻なダメージが加わることをセカンドインパクト症候群と言います。
脳震盪を軽視して練習や競技を続け、再び頭部に強い衝撃を受けると、重篤な脳障害に繋がるほか、最悪の場合、命にかかわることもあります。
ボクシング、ラクビー、アメリカンフットボール、アイスホッケー、柔道、空手などのスポーツで多くみられ注意が必要です。
脳震盪後は少なくとも3週間の休養が必要とされ、プロボクシングではノックアウトされた後は45日間は次の試合に出ることは出来ません。
意識が回復し軽い脳震盪と判断しても、軽視せずに直ぐに受診することを推奨します。
頭部外傷による脳組織の挫滅と壊死、そこからの出血を認める状態で非可逆的疾患です。
血腫が3cm以上になった場合を外傷性脳内血腫と呼びます。
脳挫傷後、24時間の経過で著名な浮腫が形成され脳挫傷の転機が決定されますので早期発見にて治療が重要です。
外傷性くも膜下出血は頭部外傷が原因で、脳を包む膜の1つである蜘蛛の巣状に張り巡らされた、くも膜の内側に出血する疾患です。
外傷性くも膜下出血だけであれば、頭痛や嘔気・嘔吐が主症状であり、運動麻痺や言語障害などを認めることは少なく、多くの場合、自然に止血・吸収されるため手術は行いません。
ただし、急性硬膜下血腫や脳挫傷などを合併している場合は手術が必要になることがあります。
外傷性くも膜下出血の予後は合併疾患による脳損傷の程度で決定され、損傷が強ければ、その分、生命の危機や後遺症残存の可能性が高くなります。
頭蓋骨と脳を包んでいる硬膜との間に出来た出血で10~20歳の若年者に多く認められ、大部分の例で線状骨折が認められます。
骨折を認める場合は受傷後3時間以内に出血が無くても経過観察が必要となります。
MRIやCT検査にて凸型の出血を認めます。
急激に意識障害などの症状が悪化することも多く、早急な受診が必要です。
硬膜と軟膜の間の硬膜下腔に出血が起こり血腫となった状態です。
血腫は脳実質を広範囲に圧迫し脳虚血や脳腫脹など二次性の病態を引き起こす結果、予後は非常に不良です。
脳挫傷により脳表の血管が切れて硬膜下腔に出血する高齢者に多いタイプと脳挫傷を合併せず、回転加速度といわれる力が働き、静脈が破綻し出血する若年者で多いタイプがあります。
MRIやCT検査にて三日月状の出血を認めます。
受傷直後から意識消失を認めることが多いですがその後、意識が回復した後に再度遅れて意識消失を認めることも多く、早急な受診が必要です。
慢性硬膜下血腫とは頭部外傷時には特に症状もなくても、1~2か月など時間をかけてゆっくりと血が溜まり、水のような慢性血腫となって脳を徐々に圧迫し、物忘れ、歩行障害、尿失禁などの症状が現れる疾患です。
特に高齢者に後発する為、1~2か月前に頭をぶつけた覚えのある方が上記症状を訴えた場合はご相談してください。
慢性硬膜下血腫であれば、溜まった血液を小さな穴から取り除く手術で症状を改善させることが可能です。