生活習慣病
生活習慣病
生活習慣病には高血圧(低血圧)や糖尿病、高尿酸血症(痛風)、脂質異常症(高脂血症)などの慢性疾患があります。
原因とした生活スタイルの変化による運動不足、食生活の欧米化、過食・過飲(肥満)など生活習慣の不摂生があげられます。
これらの疾患が併存することで動脈硬化が進行し脳卒中や狭心症、心筋梗塞など重大な疾患を引き起こす危険性が強くなります。
基本的治療は生活習慣病全てにおいて食事療法と運動療法が中心となり生活習慣の改善を行いますが、それらで改善が乏しい場合は薬物療法も併用していきます。
血圧とは動脈内を血液が流れる時に血液が血管壁を押す圧力をさします。
血圧 = 循環血液量(心拍出量) × 末梢血管抵抗(細血管の収縮程度)で表します。
最高血圧(収縮期血圧)とは心臓が収縮した時に血液が大動脈にかける圧のこと、最低血圧(拡張期血圧)とは心臓が拡張した時に膨らんだ大動脈が元に戻ろうとする力で血液を末梢血管に送り出す時の圧のことです。
高血圧患者の方の健康寿命は平均寿命より男性で9歳、女性では13歳低くなります。
診断基準は診察室血圧が140/90mmHg以上or家庭血圧が135/85mmHg以上です。
目標は家庭血圧が高齢者では135/85mmHg以下、その他は125/75mmHg以下です。
日内変動(朝が高く、夜が低い)があり、特に朝(トイレ後、安静)の血圧が重要となります。
正常高値血圧 | 正常ではあるが注意が必要な値。 |
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高値血圧 | 高血圧では無いが注意が必要な値。 |
高血圧の原因は特定されていませんが、遺伝的要因と体重、塩分の多い食生活、飲酒・喫煙などの嗜好品の摂取過多、運動不足や精神的ストレスなどの環境因子が考えられています。
まずは薬で血圧を安定させ、その間に適正体重に減量し、適度な運動、減塩に努めるなどの生活習慣を改善し、薬を減らしていけるようにすることが重要と考えます。
収縮期血圧100mmHg以下、拡張期血圧60mmHg以下を低血圧と定義されていますがが、低血圧がそのまま病的状態とはかぎらないため、臨床医によって基準の相違があります。
低血圧が問題になるのは血圧低下により各臓器への血液供給量が減少し、種々の自覚症状や臓器の機能障害が発現した場合に治療適応となります。
症状としては眩暈(最多)、起床困難、頭痛、倦怠感、肩こり、動悸、胸痛・胸部圧迫感、失神発作などです。
分類としては・本態性低血圧(90%)・起立性低血圧・食後低血圧に分かれます。
症状出現時は各種昇圧剤や抗不安薬にて治療を行いますのでご相談ください。
腸から吸収されたブドウ糖は直ぐに脳や筋肉細胞のエネルギーとして利用され、残ったブドウ糖は肝臓(2割)や筋肉(8割)でグリコーゲンとして貯蔵されます。
グリコーゲンとして蓄えられる量よりも多いブドウ糖は、脂肪として全身に蓄積されます。
エネルギー消費にて血糖値が下がるとグリコーゲンがブドウ糖に分解され供給されます。
インスリンは細胞にブドウ糖を取り込ませたり、グリコーゲン・脂肪・蛋白合成も行っています。
症状は血糖値で異なり200mg/dL前後では無症状、300〜400mg/dLにて口渇、尿量増加、倦怠感、皮膚(吹出物)、集中力低下などを認めます。また、500mg/dL以上においては嘔気嘔吐、意識低下・昏睡が出現します。
早朝空腹時126mg/dL以上、糖負荷後2時間値200mg/dL以上
早朝空腹時110mg/dL未満、かつ、糖負荷後2時間値140mg/dL未満
上記の間
インスリンを産生する膵臓のβ細胞が自己免疫や原因不明にて破壊されインスリン分泌が枯渇してしまうタイプです。
小児期発症が多いく遺伝的要素は少ないです。
遺伝的要素に生活習慣が重なりインスリン分泌能低下や細胞のインスリン抵抗性増大により発症します。
治療薬は運動療法・食事療法を行ってもコントロールが不十分な場合に開始されます。
*当院ではインスリン製剤の投与が必要な場合には糖尿専門医に紹介させていただいております。
尿酸とは核酸(DNAやRNAの総称)の主成分となるプリン体の代謝産物のことです。
細胞活動においてプリン体が不要になると、尿酸に変換され腎臓を介して体外に排泄されます。
尿酸は水に溶けにくく過剰になると体内で析出して針状の結晶を作ります。
尿酸結晶は特に足の親指の付け根に形成されることが多く、激烈な痛みや発赤、腫れなどの痛風関節炎(痛風発作)を引き起こします。
また、腎結石や尿管結石の原因にもなります。
近年では、脳卒中や狭心症・心筋梗塞のリスクとも考えられています。
尿酸値が7mg/dlで診断され8mg/dl以上で痛風発作など各種危険性が増加します。
予防としては軽い有酸素運動(無酸素運動や強い運動は尿酸が逆に増えてしまいます)、食事療法ではプリン体を多く含む食品(ビール、レバー、肉、魚、卵、魚卵など)の過剰摂取に注意が必要です。
また、水分を多く摂取し腎からの尿酸排泄を促します。
運動療法・食事療法にても改善が認められない場合には尿酸が体内で生成されるのを抑制する薬や、尿酸の排泄を促す薬などが処方されます。
痛風発作時には特効薬の内服が効果的です。
脂質異常症は総称であり、高コレステロール血症と高脂血症、高トリグリセライド血症をさします。
放置すると動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす原因となります。
*高コレステロール血症とはLDL-コレステロールが140mg/dl以上。
*高脂血症は中性脂肪が150mg/dl以上かつLDL-コレステロールも140mg/dl以上。
*高トリグリセライド血症は中性脂肪だけが150mg/dl以上。
脂質は血液に溶け難く、アポ蛋白と結合してリポ蛋白となって全身に送られます。
リポ蛋白の密度によって分類され名称が異なります。
*過剰なコレステロールを回収する高比重のHDL(High Density Lipoprotein)コレステロール
*コレステロールを細胞に運ぶ低比重のLDL-コレステロール
*中性脂肪を運ぶ超低比重のVLDL-コレステロールと更に低比重のカイロミクロン
*LDL-Cが長時間血管に留まり超悪玉-Cとなった中間型のIDL-コレステロールがあります。
エネルギー源として蓄えられ、ブドウ糖によるエネルギーが不足すると血中に送り出され、1gで9kcalと三大栄養素で最も高いエネルギーを得ることが出来る反面、増えすぎると肥満や脂肪肝の原因となります。
細胞膜やホルモン、胆汁酸などの材料となります。
脂溶性ビタミン(D・K・A・E)の吸収補助としても働きます。
コレステロールと共に細胞膜の材料となります。
中性脂肪がリパーゼで分解されて生成され、主に心臓や血管の筋肉のエネルギー源となります。
常温で個体(脂)の動物性脂肪、常温で液体(油)の魚油and植物性脂肪があります。
*動物性脂肪の摂り過ぎは中性脂肪やコレステロールを増加させる危険があります。
また構造の違いでω3脂肪酸、ω6脂肪酸、ω9脂肪酸などに分類されます。
ω3系脂肪酸にはアマニ油やエゴマ油、魚油などがあり、中性脂肪を減らす効果があります。
ω6系脂肪酸にはグレープシード油やコーン油があり内臓脂肪の減少、肌の保湿効果があります。
*ω6を化学処理したトランス脂肪酸(マーガリンなど)は心疾患・糖尿病のリスクを高めますので控えることが推奨されています。
*ω3とω6は一方が増えると他方の作用が抑えられる関係にあります。
バランスが重要で厚生労働省の食事摂取基準ではω3:ω6 = 1:4~5が推奨されています。
ω9系脂肪酸にはオリーブオイル、菜種油、べに花油などがありLDL-コレステロール減少効果があります。